はじめに
こんにちは。編み物講師・ビーズクロッシェ講師のAmabireine~アマビレーヌ~です
ビーズクロッシェや編み物をするようになって
「糸って何からできているのだろう?」と気になるようになりました
毛糸を選ぶとき、真っ先に目に入るのは色だと思うのですが(笑)

その次に気になるのは原料だと思うのです。私は糸の色が気に入ったらすぐに糸帯のラベルを見て原料を確認するようにしています
そうするうちに、この糸の原料はどうやってできているんだろうと思い、自分のための勉強の意味もこめてここにまとめることにしました
図書館に行っていくつかの学術書をまとめた形になるので、少々マニアックな記述もあるかと思いますが、なんとなーく読んでみてください
天然繊維
綿・麻は植物、羊毛などは動物・絹は昆虫といった天然に存在しているものを繊維として使っているものを言います。絹以外は撚りという工程が必要で、手打ちうどんのように太さが微妙に不均一になるため、そこが味になります
綿糸

綿の繊維は種類によって異なりますが、長さ20~45mm、太さ10~20ミクロン(1ミクロン=1/1000mm)という極めて細いもので、さらに先は細くなっています
断面は中空になっており、管を押しつぶしたような形をしているので、軽くて保湿性に富んでいます
綿繊維の主成分がセルロースで以下のような特徴があります
- 吸水性がある
- ぬれると10~15%ほど強くなる
- アルカリ性に強い
- 染色しやすく発色が鮮やか
- 熱に強い
一方で弾性回復が小さいのでシワになりやすい欠点があるものの、現在では繊維素分子の間に架橋結合を生じさせて、洗濯時や使用中にシワのよらない品質に改良されています
綿花の繊維の長さは長さによって3つに区分されます
・短繊維綿:約21mm以下
・中繊維綿:約21~28mm程度
・長繊維綿:約28mm以上
長繊維綿の中でも繊維長が35mm以上の長いものを超長綿とよばれます
綿花の品位を決定するのに重要な要素は繊維の長さであるため、現在では全世界で超長綿のシーアイランドコットンが栽培されています
毛糸
羊の毛をウール(wool)、羊以外の動物の毛をヘアと呼び、これらの繊維糸を総称して毛糸といいます。毛糸は紡績方法によって梳毛糸(そもういと)と紡毛糸(ぼうもういと)に分けれらます
羊毛

緬羊からとった繊維で、天然繊維としては綿糸についで大量に生産、消費されています。羊毛は19種類のアミノ酸が複数に結合して構成されており、成分には炭素、酸素、水素、硫黄なども含まれます
羊毛の表皮は化学薬品に対して抵抗力が強く、羊毛を守る役割を果たしていて、大部分は人の髪の毛のようにスケールと呼ばれる鱗状になっています
たとえば、水滴をはじくが水蒸気は通すといった性質、いくら曲げても折れずにもどるという性質、フェルト現象(水分を含んだ状態で熱・圧力・振動といった物理的作用が加わるとスケール同士が密に絡み合い離れなくなる現象)を起こす性質などはこの表皮の複雑な作用によるものです
羊毛の吸湿性は繊維中最大で、しかも水分の放出速度は遅く、綿・絹のような冷感を与えることもありません
羊毛の種類はおよそ300種類あるといわれいます。日本ではオーストラリアのメリノ種が衣料用として圧倒的に多く使用され、ほかの羊毛は一括して雑種と呼ばれ、メリノ種より少し太いとされています
ラムといのは生まれてから1年に達しない子羊のことで、生後6~7カ月のものがもっともすぐれたラムウールとされています

羊毛の繊維長は25~450mmまでいろいろあり、その品種によって細毛種、中毛種、長毛種、雑種羊毛の4つに分けられます
細毛種
世界でもっとも多く産出される優秀なメリノ種から採取されます
中毛種
サウスダウン、ハンプシャー、シロップシャーなど10種類以上あります。ダウン種が主体で75~130mmの短い毛がとれ、主な用途としてはニット糸、手編毛糸になります
長毛種
ボーダーレスター、レスター、リンコルンなど、いずれも150~300mmという長い繊維になります。美しい光沢をもっていますが、太いためニット用に多く使用されます
雑種羊毛
一般にメリノ種とリンコルン種を交配したものをいい、繊維の長さは120~150mmになります
羊毛以外の獣毛
ヘア繊維ともいわれる羊毛以外の獣毛は、ヤギ属とラクダ属に大別されます。ヤギ属にはアンゴラ山羊、カシミヤ山羊、ラクダ属にはラクダ、ラマ、アルパカなどに分類されます
モヘア
アンゴラ山羊またはチベット山羊の毛で原産地は中央アジアの高原地方といわれています。現在はトルコの他、南アフリカ、北米で生産されています
毛は100~300mmと長く、羊毛のようにスケールが飛び出していないため光沢があり、手ざわりもなめらかです。そのためフェルト化もせずに、ほとんど巻縮もありません。30~50%くらいの羊毛と混紡するのが一般的です
カシミヤ
カシミール地方の山羊がその名の起源です。チベット、イラン、中央アジア原産で、多くの剛毛を整毛作業によって除かねばならないため、価格は羊毛よりかなり高くなってしまいます
繊維は細く、長さは38~90mm、スケールは突出はしているが羊毛の半分しかなく、強い光沢があってなめらかです
またカシミヤ柔毛は高価ですが、可紡性に劣るので、細く柔らかいメリノ羊毛を10~50%混紡して高級ニット糸としています
ラクダ
アジア系の双峰種から得られた剛毛と柔毛があり、長さは50~65mmで太いです。スケールも巻縮もありますが手ざわりがきわめてよく、カシミヤと同様にメリノ羊毛と混紡して肌着やセーターなどに使われます
色はおおむね暗褐色で、赤色や灰色を帯びているものもあります。これらの色は漂泊しても脱色できないことから、天然色のままか濃色に染めて利用します
アルパカ

南米ペルーの産地に育成する一種の山羊で、この地方だけの特産です。繊維の表面はきわめて平滑で、スケールはかすかにみられます。クリンプ(巻縮:いわゆる縮れのことで空気を多く含むためあたたかくなります)はほとんどありませんので、毛玉はできにくいです
太さは0.30~0.35mmぐらいで、長さは100~230mm、ときには400mmに達するものもあります。色は白色もありますが、黄色、灰色、褐色もあり、褐色のものが重用されます
アンゴラ
兎毛はアンゴラ兎毛、家兎毛、野兎毛の3種類に大別されます。この中ではアンゴラ兎毛がもっとも良質で、長さは1年1回剪毛のもので、100~130mmに達し、太さは0.01~0.034mmぐらいです
色は純白で比重も軽く、柔らかく滑らかです。しかし巻縮がほとんどないため、可紡性に乏しく強度も比較的劣るのが欠点です。そのため羊毛と混紡して糸にしますが、製品となったのものであっても、毛羽が浮き上がって自然脱毛してしまします。用途としては、セーター、手袋、高級織物に使用されることが多いです
ラマ(リャマ)

南米ペルー、チリの山野に棲む鹿のような動物で、ラクダと羊の中間に属することからキャメル・シープとも呼ばれます。アルパカと異なり人に懐くことから放牧で飼われ、刈り取られた毛は衣服に用いられることが多いですが、品質は決して高くありません。
色は大体灰褐色で、繊維は太く長いですが、弾性が少ないので羊毛と混ぜて使用されます
麻糸
麻には50~60種類あり、代表的なものは亜麻(あま:リネン)、苧麻(ちょま:ラミー)、大麻、黄麻などがあります。衣料用では、スポーツシャツ、ブラウス、サマーセーター、スーツ、ソックスなどが主体で、特にニット用としては合繊との混紡で、合繊にない吸湿性・通気性などを補い、しかもサラサラとした手ざわりと独特の光沢、強度が重宝されています
亜麻

アマ科に属する亜麻植物の茎から採取した繊維で、比較的寒い地方のロシア・ベルギー・オランダ・ポーランドなどが主産国です。ロシア産は産出量がいちばん多いですが、質が良いのはベルギー産、オランダ産です。
紡績糸に使用されるの亜麻繊維の長さは50cm以上のもので、繊維の特徴は以下の通りです
- 強度が大きい
- 吸湿性に富み、乾燥速度がきわめて速い
- 洗濯性、耐腐蝕性がある
- 伸びが少なく屈曲に弱い
(弾性回復が小さく、シワになりやすい)
苧麻

主産地は中国、フィリピン、タイです。日本では九州地方と奥羽地方で産出されます。繊維長は7~28cmあり断面は楕円に近く、繊維側面には縦方向の亀裂および横方向の節があります
繊維の強度は亜麻よりも大きいですが、弾性に弱く硬いです。しかし、精錬漂泊すれば絹のような美しい光沢の繊維となりますし、水分の吸収と発散が速く、屈曲にも比較的強いです。とくに強度は羊毛の4倍、綿の2倍で、水中では乾燥時の60~70%強度が増すので、洗濯回数の多い夏の衣料に適しています。ニット用素材としては混紡積がもっとも多く使用されています。
絹糸
絹繊維は蚕が蛹になったとき、自らを保護する目的で営んだ繭から採取した繊維で、養蚕による家蚕絹と野生の繭から採取する野蚕絹の2種類があります。一般的に絹と呼ばれるのは、家蚕絹の方です
羊毛と同じく各種アミノ酸が鎖状につながった分子からできていて、分子は水素結合、塩結合によって高度に結晶化されています

太さは2~3デニールで太いものでも3.5デニールです。(デニール:糸の太さを表わす単位で、長さ9000mの糸の重さが1gであるときを1デニールの太さといいます)
糸の比重は1.33で羊毛よりも軽く、強く、弾性があり、優雅な光沢と感触を備えています。また、吸湿性にも富んでいますが、他の繊維に比べて紫外線による劣化がひどく、強度がいちじるしく低下してしまします
また日光や高湿度下では黄変したり、精錬時に微細繊維が分裂発生して染色ムラを起こしたり、摩擦に弱く羽毛が生じやすい欠点があります
化学繊維
レーヨン
化学繊維の始まりはこのレーヨンで、現在でも非常に多く生産されている化学繊維の一つです。レーヨンは天然繊維、化学繊維を通じて安い価格で得られることから、混紡用として広く活躍しています。ナイロン、ポリエステル、アクリルの3大合繊とは違い、パルプやセルロースを原料としており再生繊維に属します
ビスコース・レーヨン
木材パルプやコットン・リンターの繊維素を溶かして抽出した繊維です。繊維の中でも吸湿性が大きく、強度は絹の半分以下でもっとも弱いです。とくに水にぬれると、乾いている時よりもいちじるしく強度が低下してしまします
染色に対しては綿より少し染まりやすいです。また熱伝導率が天然繊維より高いので保湿性はよくありません。用途としては裏地、寝具向けおよびトリコット向けが多いです。
キュプラ・レーヨン
1898年にドイツのベンベルグ社が開発したため、通称ベンベルグとも呼ばれます。最近ではユニクロが開発したAIRismが有名です
上質のパルプを原料としてセルロースを作り、硫酸銅とアンモニアからなる溶液で溶かして抽出したのもです。特性としては、ビスコース・レーヨンより弾性に優れ、手ざわりも柔らかく、シワにもなりにくく強度にも優れています
用途としては、ランジェリー用素材や肌着、スーツ・スカートの裏地に使われています
ナイロン
ナイロンはアミド基(CONH)で炭化水素基(CH₂)が結合されたものが、線状に長く連なったポリアミド系合成繊維の一般名称です。ナイロンの中には重合する炭素原子数、原子の結合状態によって若干の差があります。衣料用ナイロンはナイロン6とナイロン66になります
特性としては、同じ太さの鋼鉄線よりも強いです。また摩擦や屈曲にも強く、熱可塑性があります。熱可塑性とは、熱を加えるとチョコレートのように溶けて溶解し冷やすとまた固化する性質のことです
水はほとんど吸いませんが、耐薬品性に優れています。染色が簡単で鮮やかな発色をします。紫外線に弱く、日光に長時間さらすと脆化します
ポリエステル、アクリルなど他の合成繊維の出現で、医療分野での使用量は年々減少し、代わりに産業資材分野での使用量が高くなっています。現在ではストッキングが主力用途になっています
ポリエステル

ポリエステルは1950年の英国で工業化され、ナイロンを上回る勢いで発展しました。この繊維は非常に優秀で、長・短両方の繊維で広い分野に活用されています。とくに衣料用においては合繊中でもっとも際立った特色(軽い、着崩れしない、速乾性、プリーツ性など)を持っています
強度はややナイロンに劣りますが、熱可塑性に富んでいます。吸湿性はなく、乾湿いずれの状態でも性質が変化しないうえ、弾性回復が優れています。
耐光性も高く、日光で強度が落ちたり黄変することがないので、衣料だけでなく寝装寝具、インテリア、産業資材の分野にも広く使われています。耐熱性は合繊中もっとも優れています
ポリエステルの非常に大きな特質のひとつに、他繊維との親和性が高いことが挙げられます。このため他の合繊および各種天然繊維との混紡、交撚、混編織が容易で、混ざり合うことによって自らの特性のみならず、相手側の特性も引き出すことができる繊維です
新合繊
新合繊とは、製糸、糸加工、織・編、染色加工の技術を駆使して、従来品にない風合いや高品位を現出したポリエステル長繊維およびそれらを使用した生地やデザインの総称です
1988年ごろから呼称され始め、現状では欧米においても”SINGOSEN”で通用するそうです。そして新合繊は以下の4つのタイプに分類されます
ピーチスキン調
マイクロパウダータッチと称される商品ジャンルです。超極細のソフトタイプの原糸、主に高収縮糸との複合やエアー加工などにより表面に微小なループなどを形成し、桃の表皮のような肌触りを実現した新合繊の代表的な素材です
レーヨン調
原料段階で酸化チタンなどセラミック微粒子を混入したもので、ダル光沢、高ドレープ性を特徴としています。ドレープ性とは、布を垂らしたときに重力で自然にできる「ひだ」のことです。
ニュー梳毛調
異質のポリエステル原糸2~3種を特殊複合し、さらに撚りをかけることで、生地にドレープ性、反撥性を表現しています。また、極細糸を使用することでウールにない風合い、シルエットを引き出しています
ニューシルキー調
断面形状や諸物性の変化を活用して、シルク本来のナチュラル感、ふくらみ感、きしみ感などを現出しています。
アクリル
発明は1941年、東京工大の研究室でアクリルニトリルを重合させた「シンセン」が最初です。但し、溶剤に難点があり放置されていました。その後、1944年にアメリカで適当な有機溶剤を発見し繊維化に成功しました
羊毛に最も近い性質を持つ繊維として脚光を浴び、今でもナイロン、ポリエステルとともに3大合成繊維のひとつになっています
アクリル繊維の特性は、嵩高性(フワフワ感や弾力性のことです)が繊維の中でもっとも高く、感触がやわらかで保湿性も高く、ウールの物性によく似ています
染色性もよく、ウールより軽く水で縮むこともありません。また、耐候性(温度・湿度・太陽光など自然界での耐性のこと)も抜群によいとされています
アクリルの用途は衣料用がとても多く、なかでもニット衣料分野で非常に広範囲に活用されています。セーター、ジャケット、子供服、靴下、パジャマ、ガウンなどいろいろな分野にわたっています
その他の合成繊維
合成繊維には前述の3大合繊(ナイロン、ポリエステル、アクリル)以外にポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレン、塩化ビニルなどがありますが、それの多くは産業資材用に使われています
但し、ポリウレタンだけは副素材的性格が非常に強く、使われる量は少ないですが用途が広範囲にわたっています
ポリウレタン
非常に弾性が高いので、弾性合成繊維とも呼ばれています。ゴムと同じように5~8倍に伸びて、瞬間的に戻ります。ゴムよりもはるかに軽く、ゴムのような老化現象がなく、自由に染まり、ゴムよりはるかに細い糸が得られるなどの利点を持っています
この繊維は100%で使うことはなくて、他の繊維との低率混用(5~20%程度)で十分特性が生かせます。用途は下着を主に、水着、靴下、サポータなどでも使用されています
まとめ

メジャーな原料だけをまとめたつもりでおりますが、思いのほか膨大になってしまいました(焦)
ひと口に糸といってもさまざまな材料があり、作品を作る際にはそれらの特性を分かった上で糸選びをしなければいけないなと改めて気づかされることが多くありました
ここにまとめたのはほんのわずかなことなので、これからも引き続き糸の材料については積極的に勉強していこうと思うきっかけとなりました
ちょっと、いやだいぶ難しい記述になったかもしれませんが、皆さまの糸選びの一助になると幸いです
ということで、Amabireineでした!

じゅんこ