ハンドメイド作家さんにも電子帳簿保存法って関係あるの?~その2~

※この記事は2023年2月1日時点の情報で書いています。現在とは異なる可能性がありますので、必ず税理士等の専門家にご確認ください

電子帳簿保存法への対応

上記の図解で電帳法に対応しなくていい方は、これ以下は読む必要はありません。対応しなくてはならない方と興味のある方のみお読みください

では電帳法へ対応しなければならないことが分かったとします。企業であれば、経理部門や総務部門が対応し、他部門はそれに従えばよいのですが、個人事業主は自分で対策をしなければなりません。(個人事業主の中には、最近の会計ソフトCMが流れるまで、そもそも電子帳簿保存法という法律の施行すら知らなかった方も多いと思います)

では具体的に何をすればよいのでしょうか?

それにはもう少し電子帳簿について深掘りする必要があります。ここまでざっくり電子帳簿と表現してきましたが、大きく以下の3つのカテゴリーに分けられます

①自己作成帳簿等保存制度
 ⇒自己が会計システムなどを使用し作成したものを電子保存すること
②スキャナ保存制度
 ⇒紙で作成、または紙で受領した書類をスキャナなどで読み取って電子保存すること
③電子取引データ保存制度
 ⇒電磁的にやりとりしたデータを電子保存すること

①は国税関係帳簿になり、仕訳帳や総勘定元帳などが該当します。原則として 青色申告の方が対象になります。確定申告したとしても白色申告の方はあまり関係ありません

※青色申告は複式簿記を用いて会計帳簿(貸借対照表・損益計算書など)を作成している会社および個人事業主の申告方法となります

②はもらったレシートや領収書を紙で保存するのではなく、スキャナなど電子データで取り込んで保存することです。 現状では強制では無く任意ですので、わざわざ紙をスキャンする必要はないことから、これも関係ありません。「いやいや、紙保存は場所もとるし煩わしいから、電子保存したい」っていう方は別です。そのようなソフトも市場に出てきているので興味のある方は調べてみてください

③が一番重要で、冒頭から述べてきている電帳法はここのことを述べています。つまり最初から電子データでのやり取りでペーパーレスのため、原本が電子データであるという取引です。繰り返しになりますが、もう一度国税が指定している電子取引の例を挙げておきます
・電子メールでのやりとり
・ネットバンキング取引
・ネットショッピングの使用
・クレジットカードの使用
・PayPay、楽天ペイなど携帯アプリでの決済
・LINEなどのアプリを使用した書類のやりとり
・クラウドサービスの利用

ではこれらの電子取引をどのように保存しておけばいいのでしょうか?ある程度の企業であれば、新たなクラウド環境などのシステムを導入して、そこに保存していくという方法が考えられます。その他にも国税が推奨している方法がいくつか紹介されていますが、ハンドメイド作家さんであれば以下の一択と考えてもらって間違いありません。それは

『データ改ざん・訂正・削除に関する事務処理規程を定め運用すること』

!?

いきなりそんなこと言われても、具体的にどうすればいいかわからないですよね。一応、国税局には前述の「事務処理規程」の案がダウンロードできるようになっています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm
こちらのHPの

「電子取引に関するもの」
 ▶電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者の例)

を使用します

これをダウンロードしてひな型とします。Amabireineでは下記画像のように文面を修正し、「電子取引データ訂正・削除記録用紙」と併せて運用する予定です。自己責任の範囲で真似をしていただくのは構いませんが、このWord・Excelの配布はしておりませんのでご了承ください。とは言っても簡単な書式なので、ご自分で作成できると思います

もし税務調査などで聞かれた場合には、「事務処理規程を作成して運用しています」と言えば納得してもらえると思います。但し、注意が必要です。改ざんなどは無い前提でのお話はもちろんですが、やってしまいがちなのが電子データの削除です。副業の方を含め作品の取引に関するメールなどの電子データは、7年間は削除してはいけません。そのままの状態で取っておきましょう。事務処理規程にもそのように記載があります

「なぜここまで準備しなきゃいけないの?」「自分のところには税務調査なんてこないから関係ないわ」、という方もお見えになると思います。この辺りは自己責任になりますので、小規模な個人事業主だから調査はないとは言い切れないのがつらいところです

電子帳簿保存法の罰則

税務調査が入り、電子帳簿保存法に違反していた場合、どのような罰則があるのでしょうか。備忘録的に書いておきます

①青色申告が取り消される
 ⇒企業の立場からすれば青色申告が取り消されたら、さまざまな税制優遇が無くなり納税額が増えて大変なことになります。もともと白色申告の方は関係ありません

②重加算税や推計課税が課せられる
 ⇒重加算税とは通常よりも重い税額を課せられること。それよりもやっかいなのが推計課税です。ずさんな会計処理をしていると、「だいたいこれくらい隠しているよね、間違っているよね」と税務署の都合のよい理論値で課税してきます。場合によってはものすごい納税金額になります

③会社法により100万円以下の過料が課せられる
 ⇒シンプルに帳簿の保存義務ルール違反ということで罰せられます

電子帳簿保存法施行までの紆余曲折

この章は完全な個人的な意見ですので、興味のない方はスルーしてください。2024年1月1日から個人事業主を含むほとんどの企業がかかわっている電帳法ですが、ニュース等で話題になったり、解説されたりしたことがほとんどありません

実はこの法律は、当初2022年1月1日から施行される予定でしたが、あまりにも国からのアナウンスが遅く、大企業を含めほとんどの企業に浸透していなかったため、土壇場で2年間実質延期になったという経緯があります

それから1年以上経ったので、残り11カ月という時期にきたのにもかかわらず、いまだにごく一部の界隈でしか話題になっていません。1年前にくらべセミナー案内はしつこいくらい来るようになりましたが、メディアではほとんど取り上げられた記憶がありません。最近やっと会計ソフトのコマーシャルで見かけるぐらいです。でも多くの方にとって今でも「何それ?」だと思います

法律を作って大勢の人に関係するのなら、国や政府がもう少しメディアに働きかけて話題にしてもらうべきだと思います。法律を可決して、しれっと公布したところでどれだけ国民の目に触れるのでしょうか

今回の電帳法は、働いている人の多くに関係してきます。2020年度のデータでは労働人口は約6,400万人と言われています。つまり労働人口の3分の1が何らかの電子取引にかかわっていると仮定しても、2000万人以上の人が関係する法律なのに、アピール不足で一部の界隈でしか話題にならないのはどうなんでしょうか。守らなくていい法律ととらえられても仕方がないと思います

私も2021年夏ごろにこの法律の内容を詳しく知り、その時点で施行までもう半年ありませんでした。税理士の先生と相談し法律に抵触しないように準備を進めました。そして忘れもしない2021年12月の第1月曜日の朝、政府は2年間の猶予期間をもうけるかもしれないという記事を日経新聞で読み、「そりゃないわ」と思わず愚痴った記憶があります。そしてその数日後、日経新聞の記事通り2年間の宥恕(ゆうじょ)処置となりました

そりゃそうですよね。顧問税理士に聞いたところでは、2021年秋の時点では2割ぐらいの企業しか法律の施行を認識しておらず、知っていたとしても準備が間に合わないから対応をあきらめている企業がほとんどだったそうです。そんな法律になんの意味があるんでしょうか?以上、まじめに取り組んでいたからこそ出てくる愚痴でした

まとめ

かなりの長文になってしまいましたが、2023年2月1日現在での情報で解説しています。インボイス制度もそうですが、電子帳簿保存法は一般企業からすればかなりの業務負担ですし、「この場合はどうすればいいんだろう?」という不明な点も多くあります。そこはまだ施工まで約1年あるので、国税庁のQ&Aや解説も充実してくると思われます。そして新たな救済処置もあるかもしれません

そのためハンドメイド作家さんなどのような個人事業主は、もう少し様子見してもいいかもしれません。タイムスタンプが必要だとか、専用保存のクラウドが必要だとか、会計ソフトメーカーは不安を押し付けてきます。お金をかけて対応した後に、緩和されてそこまでやらなくてもいいよとなる可能性も否定できないからです

しかしながら罰則もある法改正ですから、アンテナを高くして情報収取は怠らないようにしていただくのが、今できる最善の方法かもしれません。以上、広報部長Tでした。

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