※この記事は2023年2月1日時点の情報で書いています。現在とは異なる可能性がありますので、必ず税理士等の専門家にご確認ください
はじめに
2023年10月1日からインボイス制度が始まり、その3か月後の2024年1月1日からは電子帳簿保存法も開始されます。この2つの制度に共通しているのは、会社の規模を問わずほぼすべての企業・個人事業主に関係してくるところです
おそらくハンドメイド作家さんの多くは年間の売上高が1,000万円以下の小規模な個人事業者と思われます。今回はそのような方にどのように対策をすればよいのかをお話したいと思います
売上高が1,000万円を超える方は確定申告を税理士さんに頼むことが多いでしょうから、電子帳簿保存法についても担当税理士さんに相談できますし、ネット上にも情報はたくさんあります。ただ、売上が少額の方のための情報って思ったより少ないですし、確定申告にも共通することですが、個人で解決するには難しいんですよね。そんな迷えるハンドメイド作家さんの少しでもお役に立てればと思います
そもそも電子帳簿保存法とは何?
まずは電子帳簿保存法(以下、電帳法と表現します)とは何なのか、おさらいを含めて理解を深めましょう。言葉からなんとなくイメージは付くものの、ちゃんと理解している人は少数ではないかと思います。すごい乱暴な言い方をすれば「電子取引情報は電子データで保存しなければならない」、これだけです
これって、今までと何が違うのでしょうか?
現時点での法令でも「電子取引情報は電子データで保存しなければならない」となってはいるのですが、追加文章として但し書きがあって、「電子取引情報は紙で印刷して保存しても良い」ことになっています。ところが税制改正でその但し書きが2024年1月1日からは削除されてしまうことが決定しました
パッと見、「それで何が変わるの?」と何事もないように思われますが、企業的には大変なことなんです。例えば今まで取引先からメールのみでもらっていた請求書があったとします。通常はメールで届いた請求書を紙で印刷して、社内伝票のエビデンスとして添付し、上司の決裁をもらったら支払いをします。そして印刷した請求書と上司が捺印した社内伝票をセットで保管する、そんな運用が多いかと思われます。しかしながら2024年1月1日からの取引については、その運用(いわゆる紙で保存)が認められなくなるのです
もう少し詳しく解説すると、その印刷した書類は税務署としては証拠書類(エビデンス)として認めないということ、そして紙ではなく取引先からもらったメールを電子データ※として保存していなくてはならない、ということになってしまったのです。いままで長年運用してきた方法が認められなくなるので、経理・税務・会計業界はざわつきました
※データは授受したデータそのままでなければならないことまでは求められていません。改竄(かいざん)されることのない方法であれば、別のデータに変換して保存することも認められています。例えばメールをスクリーンショットで画面コピーするとか、添付されたWordやExcelをPDF化して保存することなどは認められています
電子帳簿保存法が導入される理由は?
役所の方が民間企業以上に紙業務から脱却できていないのに、なぜこのような法令が可決されたのでしょうか。それはおそらくIT技術の進化が原因です。税務調査では各会社の書類が本物であるかどうかを厳しくチェックされます。取引先から届いた書類を印刷するということは、厳密に言うとそれは原本ではありません。つまり都合のいいように細工されている可能性を税務署は疑っているのです
ここ数年でプリント技術や画像の加工技術は飛躍的に進化しました。技術の進化は素晴らしいことですが、それを逆手にとって悪用される可能性を危惧しているのではないでしょうか。経費を水増しして利益を圧縮し、脱税をしている人が多くいるということ税務署側は疑っているのではないか、もしくはそのような可能性を牽制していると推察しています(まったくの私見です)

ハンドメイド作家さんにも電帳法は関係あるの?
具体的な電子取引とは?
さて、皆さんが一番知りたいであろう、ハンドメイド作家さんにも電帳法が適用されるのかどうかについて解説していきます。結論から言うと、適用される方と適用されない方に分かれます。ハンドメイド作家さんだからこうだ、というくくりはありません
但し、ハンドメイドが本業の場合、99%以上の方は関係すると思ってください。それはこのご時世に、電子取引無しに企業運営(個人事業主含む)が成り立つわけないからなのです
国税局が指定している電子取引は以下のようなものがあります
・電子メールでのやりとり
・ネットバンキング取引
・ネットショッピングの使用
・クレジットカードの使用
・PayPay、楽天ペイなど携帯アプリでの決済
・LINEなどのアプリを使用した書類のやりとり
・クラウドサービスの利用
さてここで質問です。皆さんはご自身のハンドメイド作品が売れて顧客から入金されたことを何で確認していますか?銀行まで行ってATMの通帳記帳で確認する、という方がいないとは言いませんが、99%以上の方はスマホアプリかパソコン経由のネットバンキングで確認していると思います
つまりネットバンキングひとつ考えただけでも、ほぼ全ての会社は電子取引を利用していることになってしまうため、電帳法が適用されてしまうのです。なんならネットバンキングの普及率は、一般企業よりスマホアプリが気軽に使えるハンドメイド作家さんを含めた個人事業主の方が高いのではないか、とすら思っています
怖いからネットバンキングを使っていないと仮定しましょう。では、電子メールは?LINEは?SNSのダイレクトメールは?となります。まさか、対面と音声電話と手紙のみでオーダーのやり取りをしている方がたくさんいるとは思えません。99%以上の方は電帳法に関係してくると言ったのはこのような理由からです
副業にも電子帳簿保存法は関係する?
副業でも関係あるのか?と思った方もいると思います。これについては国税局のQ&Aにピンポイントで回答があります
《国税局からの引用》
・電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
・問59 私は、勤務先から支払われている給与のほか、副業として行っている講演・原稿執筆から得ている雑所得を有しています。これらの雑所得を生ずる活動については、相手方等との一切のやりとりを電子メール・ウェブサイト上で行っていますが、法第7条の規定に基づき、その取引情報に係る電子データを保存しなければなりませんか。
・【回答】 所得税法上、ある年の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額について、前々年の金額が300万円を超える場合には、その業務に関してやりとりした請求書・領収書等(以下「現金預金取引等関係書類」といいます。)を保存する必要があります。 副業として行っている講演・原稿執筆等は、ここでいう雑所得を生ずべき業務に該当することから、その業務に関する現金預金取引等関係書類の保存義務があるため、それを電子データで授受した場合には、法第7条の規定に基づいて当該電子データを保存する必要があります。
《引用終わり》
はい、ちょっと難しい言い回しが多いのでわかりにくいですよね。要約すると、本業の給与所得がありハンドメイド作家としては副業の場合、副業収入は雑所得に該当し、その前々年の雑所得金額が300万円を超える場合には、電帳法の義務が発生するということになります
まとめるとこうなります

電子帳簿保存法への対応
前述の図解で電帳法に対応しなくていい方は、これ以下は読む必要はありません。対応しなくてはならない方と興味のある方のみお読みください。長くなってしまいましたので、~その2~で続きの解説を致します