ハンドメイド作家なら一度は考えたことのある著作権について

はじめに

こんにちは、サイト管理人兼広報部長Tです。半年くらい前にアップした編み物YouTuberの動画削除裁判の記事が思いのほか読まれているようです。ありがとうございます

世の中にSNSが広まって久しいですが、ネット社会になる前は、何かを参考にしようとしたら、雑誌や図鑑などの書籍、テレビ、そして実際に実物を目にするしかありませんでした。それが今や、検索ボタンひとつで様々な参考文献や写真、デザインなどを見ることが出来ます

そこで、ハンドメイド作家さんなら一度は考えたことがあるであろう「著作権」について、素人ながら勉強も兼ねて調べてみようと思います

著作権・特許権・商標権の違いって何?

調べていてすぐにわかったのは、この時点ですでにごっちゃになっているということ。百聞は一見に如かずということで、表をご覧ください

大雑把な図解なので細かな部分は省いています。トップに「知的財産権」があり、まずは大分類として、著作権産業財産権「その他」に区分されるということです。漢字からなんとなく意味は分かるのですが、産業財産権って何?となりますよね。一般人ではなかなか聞かない用語だと思います。産業財産権の中には小分類として4つの区分(特許権・実用新案権・意匠権・商標権があり、著作権とは異なるカテゴリーに分類されています

産業財産権のこれら4つを消せるボールペンで例えてみましょう。

  • 特許権:ボールペンなのに強くこする(熱を加えると)と消える
  • 実用新案権:人間工学に基づき長時間書いても疲れない持ち手
  • 意匠権:ボールペン全体で今までにない特徴的なデザイン
  • 商標権:〇〇〇〇ボールペン(新ブランド名で展開)

ざっとこんなイメージでしょうか

一方、編み物などのハンドメイド作品については、この産業財産権よりも著作権にかかわる問題の方が多いと思われるので、これ以下は「著作権」を掘り下げていきたいと思います。ちなみに著作権は文化庁(文部科学省)の管轄で、前出の産業財産権は特許庁(経済産業省)の管轄らしいです。この時点ですでに頭が混乱してますが頑張って調べたいと思います

著作権って何だろう?

レポート作成時の文や写真の引用について

私の認識は「100%マネをしちゃいけない」ということ、いわゆるまるパクリがNGなのは理解しています。でも、よくあるモチーフにした、オマージュした、リスペクトしたなんて言葉もあるように、まるパクリではなく参考にしたというのはどこまで許されるのでしょうか? 10%なら、50%なら、99%なら・・・。どこが境目でどのように判定するのでしょうか。考えれば考えるほど謎が深まります

そこで特許権を管轄している文化庁のホームページをいろいろ見ていると、編み物ではなく学生のレポート作成についてですが、以下のような解説がありました

「作品をコピーしてレポートにそのまま貼り付け、あたかも自分の記事や写真であるかのように利用すると著作権の侵害行為になります。他人の記事や写真を利用したい場合には、その部分をかぎ括弧でくくるなどして自分の文章と区別し、出典を明らかにしましょう。これを【引用】のルールといい、このルールを守っていれば著作権の侵害にはなりません。」

なるほど、だから本の最終ページとかに引用した参考書や論文などの記載があるわけですね。しかも「【引用】というルールの下では相手に了解を得ることなく利用できる」らしいです。これは新しい発見です。文や写真はこれでOKそうですね。このホームページに使用している写真は、2022年11月現在では、自分で撮ったものとフリー素材しかありません

とは言っても先日このホームページで使用していた自分で撮った写真を1枚削除しました。市販の本の見開きがチラッと載ってしまっていたのですが、どうやらそこの隅に写っていたモデルさんの画像が引っかかったらしいです。前出の図解で言うと肖像権に抵触したと思われます。肖像権なので引用とも関係ありません。いやはや勉強になりました

少し話はそれましたが、今後もしどうしても使用したい写真や文章があれば、引用ルールに則れば使用できるということになります。でもなんとなくハードルが高い感じがしますね。皆さんはどう思いますか?

【引用】のルール

  • 引用した部分が明確に判別できるようにカッコや記号で囲う。
  • 本文が主体で引用した部分は補足に過ぎないこと。
  • 引用する必要性があること。
  • 改変しないこと。
  • 出典元を記載すること。

文化庁HP
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

音楽などの創作活動について

では編み物とかの作品はどうなんでしょう?その疑問は払拭されていません。引き続き文化庁で調べていると、編み物と似たような問題である音楽の作曲についての解説がありましたのでご紹介したいと思います

「どのような作品であっても、自分が考えて創り出したものには著作権が発生する。著作権が発生するということは、勝手に他の人の作品をコピーしたり、アレンジしたりすることができないということになります。」

「アレンジできない」、これは気になるワードではないでしょうか。ただその解説には

「他の人が勝手に自分の作品をアレンジして、自分が創ったようにして公表されたら、どう思うか。 作者の気持ちになって考えなさい。」

としかありません。だから、そのアレンジぐあいがどの辺までがNG?なのかを知りたいんですけどね

著作権違法にならない創作物のアレンジぐあいとは?

編み物に限らず、作曲・絵画・小説・論文など創作物には必ずと言っていいほど、参考にする作品や影響される作品があります。では、どこまで真似したらNGなのか、そろそろ結論が知りたいですよね。まず、50%までならいいとか、75%一緒はさすがにダメでしょとかという問題ではないということです。ずばり著作権違法になるかならないかは

他人の作品を手本としながらも、作品の作風は、必ず自分の個性を前面に出したオリジナルを組み込んでいるかどうか

で決まります。つまり、「自分の作品をパクっただろ!!」と言われたら「参考にはさせて頂きましたが、あなたの作品とはここが明確に違いますよ。」と説明できればいいということになります。小難しく法律的な言い回しをするのであれば、「作者独自の創造・創作的な表現がその作品に盛り込まれているか」どうかがカギとなります。

ここで1つ弁護士の方が2017年日本弁理士会に寄稿された「手芸作品及び手芸レシピの法的保護」を紹介したいと思います。
https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/2775

重要なポイントは

  • 「作品」もしくは「作品の手芸レシピ」のどちらにも著作物性が認められない場合には、どのように利用しても著作権侵害にはならない
  • 「作品」もしくは「作品の手芸レシピ」のどちらかに著作物性が認められる場合には、個人的に楽しむ目的や家族にプレゼントする目的であれば、私的使用の複製に該当し著作権侵害にはならない

ここからはあくまでも個人的な見解ですが、編み物は他の創作物と比べて著作権の判断が難しいように思われます。なぜなら、人によって手の大きさや編み方のクセ、上達度のなどの違いもあり、同じ編み図から作ったとしてもまったく同じ作品を作ることは、完成度から見た場合難しいからです

妻が学生の頃、ゲージを考えず編んだため、鎧のようにカチカチに出来上がったセーターがありました。もしこのレシピに著作物性が存在し、カチカチのセーターを販売した場合「著作権侵害だ!」と言われるしょうか?まぁ、これは極論としても、専門家によって見解が分かれるような気がします

ただ確実に言えることは、上達して見本とまったく同じように編めるようになり、且つ個人利用の範囲を超えれば、著作権侵害になることは間違いないということでしょう

著作物を自由に使える場合もある?

私的使用の複製

著作権で全てをがんじがらめにしてしまっては、楽しめるものも楽しめなくなります。そこで、いくつかの場合は無断で使用しても良いことになっています。まずは、前述もした通り個人の範囲で楽しむためのものですね。そりゃそうでしょと言われそうですが、本と同じデザインのマフラーを編むのは自由です。まったくそのままのデザインで販売するのはNGとなるということです

教育機関での使用

次に学校などの教育機関で使用する場合です。運動会や学芸会などで流行りの曲が使われることって多いですよね?これは著作権上例外として認められているからなのです。「運動会の行進曲ぐらいいいだろう」って軽い感じで使っているわけではないということです。ジャニーズの曲などがダンスに使えるのはちゃんとした理由があったわけですね

少し話は脱線しますが、2022年10月24日に最高裁で判決の出た「JASRACが音楽教室から著作権使用料を徴収する権限があるかどうか」について触れたいと思います。この件については、そこまでJASRACって口挟んでくるの?と思った方も多いのではないでしょうか。結論としては、最高裁は「生徒の演奏については、音楽教室が音楽著作物を利用しているとはいえない」として、徴収の対象とならないとしました

この判断は、著作権が教育に使われる場合は例外として認められていることに則っていると理解できます。いわゆる義務教育や学校法人ではなく、カルチャースクールにも例外として認められたのは、大きな意義があると思います。そもそも、レッスン料の一部にJASRACが著作権を主張して徴収していくのも違和感があります。ただ著作権者に還元されるので、納得する部分もあります(先生・講師が弾く分については著作権使用料を払わなくてはいけないそうです)

引用のルールを適用

あとは先にも述べたように、ルールを守って【引用】する場合です。論文や検証実験などには欠かせないですね。また官公庁が発表している法律・通達類は当たり前として、官公庁が作製したものについては「説明の材料として」なら転載することが認められています

まとめ

かなりの長文になってしまいましたが、編み物などハンドメイド作品で著作権侵害にならないためには、<作者の個性を前面に出したオリジナル(創造・創作的な表現)を組み込んでいるかどうか>これにつきます

言い換えれば、ありふれたモチーフやデザイン、手法などは、そもそも著作権が発生しないので、どのように利用しても著作権侵害にはならないことになります。これは、編み物YouTuberの動画削除裁判の結論と同じです

例外として、私的使用のための複製、引用に基づいた利用、学校教育で使用、営利を目的としないなどであれば、著作権者の承諾がなくとも利用できるとされています

著作権はあまり権限を強くすると、文化の発展にブレーキをかけてしまうのでとても難しい判断を迫られます。そのためアメリカでは「フェアユース」という考え方があり、若干ですが公正的な利用可能な範囲が日本より広くなっています。もちろん逆も考えられますから、日本が大丈夫だからといってそのまま全ての外国の著作物に当てはめるのは危険なのでご注意ください

以上、編み物などハンドメイド作品に携わっている方に、著作権の理解に少しでもお役に立てれば幸いです。長々とお付き合いいただきありがとうございました。広報部長Tでした

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